2007年度 九州・西日本支部 若手セミナーのご案内



「低温物性・超電導特性の測定法」

本セミナーは、大学や企業の若手研究者や技術者を対象とし、低温
技術や超電導技術の基礎を理解してもらうことを目的として開催す
るものです。

今回は、九州・西日本支部でさまざまな低温物性・超電導特性の測
定法が行われていることを踏まえて、これらの測定法に携わってい
る講師の先生方に紹介していただくことにしました。他の大学や研
究機関で行われている測定方法は実際には自分たちではできないか
もしれませんが、お互いに情報を交換することにより、現象をより
詳細に議論し、理解するのに役に立ちます。また測定方法によって
は自分たちのところに導入してみるのも面白いかもしれません。普
段の学会などで測定方法については簡単にしか触れられていません
ので、この機会に測定方法について理解を深めるのは有意義なこと
と考えます。

この機会に支部会員にかかわらず、多数の若手を含む研究者・技術
者が参加され、この分野での知識や交流を深められることを期待し
ます。

主  催: 低温工学協会 九州・西日本支部
日  時: 2007年9月25日(火) 13:00 〜 27日(木)12:00
場  所: 北九州国際会議場  3階 33会議室 JR小倉駅より徒歩5分
      〒802-0001 福岡県北九州市小倉北区浅野三丁目8-1 
      TEL;093-511-6848 FAX;093-521-8845

日  程:
9月25日(火) 
   13:00〜13:10 開会の挨拶           住吉文夫支部長(鹿児島大学) 
   13:20〜14:50 講義「超電導体の損失測定」
             岩熊成卓(九州大学)
   15:00〜16:30 講義「ポインチングベクトル法による超電導体の損失評価」
             川畑秋馬(鹿児島大学)
   16:40〜17:30 参加者(グループ)による自己紹介
   18:00〜    懇親会(北九州国際会議場2Fシーサイドレストラン「ラ・プラージュ」)
 9月26日(水)
    9:00〜10:30 講義「透過電顕を用いた超電導体の組織観察」
             波多聰(九州大学)
   10:40〜12:10 講義「超電導体の機械特性の評価法」
             西島元(東北大学)(東北・北海道支部との交流により)
   13:00〜14:30 講義「バイブレーティングリード法による低温物性評価」
             重松利信(佐世保高専)
   14:40〜16:10 講義「AC法, Campbell法による超電導体の電磁評価」
             倪宝栄(福岡工業大学)
   16:20〜17:50 講義「高温超電導線材の特性評価技術開発」
             木須隆暢(九州大学)
9月27日(木)
   9:00     見学会  安川電機ロボット工場

定  員: 40名

参 加 費: 正会員 7,000円、非会員 10,000円
  (テキスト代、懇親会費等を含みますが、宿泊費は含みません。
  同時に学会入会申込みの方も正会員とみなします)。

申込締切: 2007年9月10日(月)但し、定員に達し次第締め切ります。

申込方法: 参加申込書 にご記入の上、下記事務局宛にファックスでお送り下さい 。
        低温工学協会 九州・西日本支部 事務局(鹿児島大学 住吉研究室内)
        Tel:099-285-8413 Fax:099-285-8413
        E-mail:jcryo_qw@sc.kyushu-u.ac.jp

問合せ先: 2007年度 九州・西日本支部 若手セミナー 世話人
        九州工業大学 情報工学部 小田部荘司
        Tel:0948-29-7683 E-mail: otabe@cse.kyutech.ac.jp

参加申込書はここからダウンロードしてください。



九州・西日本支部若手セミナー報告




低温工学協会九州・西日本支部では、大学や企業の若手研究者や技
術者を対象として、毎年、超電導技術や低温工学の基礎を理解して
もらうことを目的として若手セミナーを開催してきています。第6
回目となる2007年度は2007年9月25日から9月27日の3日間に、北九
州市の北九州国際会議場において、学生20名、講師7名、教員7名の
合計34名の参加者で、「低温物性・超電導特性の測定法」というテー
マのもと、講義、懇親会、工場見学などを行いました。

今回のテーマの「測定法」です。九州・西日本支部ではいくつもの
ユニークなまたは洗練された測定方法を使って低温工学・超電導工
学の発展に寄与しているという実績があり、これを踏まえてこのテー
マを決めました。測定方法はほぼ確立されて学会等での報告では、
その原理原則や具体的な測定方法についてはあまり詳しいことを知
ることができません。この若手セミナーでの講義を通じて、測定方
法の裏方や目的としていることなどを知ってもらうことを目標にし
て、各講師に講義をお願いしました。

初日は超電導体の損失測定の2つの方法について九州大学の岩熊成
卓先生と鹿児島大学の川畑秋馬先生に講義をいただきました。岩熊
先生は鞍型ピックアップ法を完成させ、それにより高温超電導体の
損失を幅広い温度、周波数、磁界領域において非常に精度よく測定
できるように尽力されてきました。川畑先生はポインチングベクト
ルを直接測定することにより損失を測定するという難しい測定方法
を紹介され、これまでにない特徴的な測定ができることを説明され
ました。九州工業大学の松下先生からはこれら2つの測定が本質的
には同じであり、ピックアップ法では外部磁界が一定であることを
前提に測定しているのだということを指摘していただきました。こ
の後、恒例の参加者の自己紹介をグループごとに行っていただき、
その後そのまま懇親会を行いました。若手研究者たちの交流に役立っ
ていれば幸いです。

二日目はさまざまな測定方法が紹介されました。九州大学の波多聰
先生からは電子顕微鏡について講義がありました。先生は透過型電
顕の専門家ですが、走査型電顕についても解説してくださいました。
原理や観察によって得られる画像を詳細にしかも非常に分かりやす
く説明されたので、学会や雑誌で報告される画像の意味がはっきり
と分かるようになりました。次に東北大学の西島元先生は東北・北
海道支部との交流により講義に来ていただきました。九州・西日本
では行われていない、機械特性について解説していただきました。
結局機械特性が分からなければ、実際に超電導線を利用できないと
いう、あたりまえのことをきちんと示され、その重要性、そして測
定の難しさについて独特の語りで講義していただきました。午後に
は福岡工業大学の倪宝栄先生からCampbell法による超電導体の電磁
評価を講義していただきました。Campbell法は微小交流磁界重畳法
とも言われ、測定方法が若干ややこしいのですが、超電導体内の臨
界電流密度以外にも得られる情報が多いのが特徴で、演習問題付の
講義でした。佐世保高専の重松利信先生からはバイブレーティング
リード法による超電導体のピンニング情報の測定について講義をい
ただきました。先生は高専におられることから、教育面でも幅広く
活躍されていることがよく知られており、超電導体を使った工夫さ
れた独特のデモについても紹介してくださいました。最後に、九州
大学の木須隆暢先生からはLTSLM(low temperature laser scanning
microscopy), SEI(Seebeck effect imaging), SSM(scanning SQUID
microscope)を駆使して総合的に得られる高温超電導体の電流制限
因子の解明について講義をいただきました。電顕に代表されるミク
ロスケールと、四端子法に代表されるマクロスケールの測定方法の
間を埋めることから、これらの手法は大変注目されており、興味深い講
演でした。

三日目は北九州市を代表する安川電機でのロボット工場見学でした。
安川電機では1978年に最初の全電気モーター型の産業ロボットを出
してから、特に自動車工場用の6自由度のロボットではリーディン
グカンパニィとしてよく知られています。最近では液晶TVのパネル
搬送ロボットなど、時代の要請に応えるロボットを次々と開発して
きています。この工場見学では実際にロボットがロボットを作って
いるところを見学し、そしてゲームを通じて協調型ロボットの性能
の高さを実感する体験コーナーなどを楽しむことができました。

参加者からのアンケートでは、「各大学でユニークな測定法が行わ
れていることが分かり非常に勉強になりました。それと同時に、自
分の知識のなさにも気付かされたセミナーでもありました。今後行
われる学会等にも積極的に参加し、知識をより深めていきたいと心
から思うことができましたので、非常に有意義な時間が過ごせたと
思っています。」といった感想をいただけました。

三日間を通じて、無事にセミナーを終了できたのは参加者の協力が
あったからです。またお忙しいところ快く講師を引き受けてくださっ
た先生方には大変感謝しております。ここに謝意を表して報告とさ
せていただきます。

    (九州工業大学 小田部荘司)



セミナー会場の様子


セミナー終了後の記念撮影


見学会の様子


Last modified: Wed Apr 18 08:57:55 JST 2007