九州・西日本支部2011年度総会および支部設立10周年特別講演会 開催案内


2011年度の九州・西日本支部総会および支部設立10周年記念講演会
を下記のように開催いたします。支部会員各位は是非ご参加下さい
ますようお願い申し上げます。なお、支部会員には別途総会開催案
内を電子メールにてお送りしております。ご欠席の場合には必ず委
任状をご返送下さいますようお願いいたします。

             記

日 時: 2011年4月22日(金)〜4月23日(土)
場 所: 九州大学 伊都キャンパス 稲盛財団記念館 1階 稲盛ホール
     〒819-0395 福岡市西区元岡744
     伊都キャンパス、稲盛財団記念館へのアクセスはこちらをご参照下さい。(30番の建物)

第1日目
(1)総会: 13:50〜14:20
1. 2010年度事業報告・決算について
2. 役員交代について
3. 2011年度事業計画・予算について

(2)設立10周年記念式典: 14:20〜17:00
1.式典: 14:20〜15:00
 ・支部長挨拶 
 ・支部10年の歩み (前支部長:松下 照男 氏)
 
2.特別講演会: 15:20〜17:00
 ○ 「電磁現象の解明から超電導線材設計の時代へ」
     九州大学名誉教授 山藤 馨 氏
 ○ 「実用期に入った高温超電導線の開発と応用製品への展開」
    住友電気工業(株) 佐藤 謙一 氏
  
(3)懇親会: 18:00〜

第2日目
九州・西日本支部研究会

(1)特別講演: 10:00〜11:40
○「Y系超電導線材・機器の開発戦略と今後の展開(仮題)」
      超電導工学研究所  塩原 融 氏
○「低温超電導線材の開発と機器への展開(仮題)」
      ジャパン スーパーコンダクタ テクノロジー(株) 宮武 孝之 氏

(2)学生1分間スピーチ: 14:20〜14:50

(3)学生ポスター発表: 14:50〜16:00

(4)各機関からの研究報告: 16:00〜17:30
  広島大学
  高知工科大学
  山口大学
  鹿児島大学
  熊本大学
  九州工業大学
  九州大学
  九州電力(株)総合研究所


問合せ先:九州大学大学院システム情報科学研究院 電気システム工学部門
    木須研究室 
    TEL: 092-802-3678  FAX: 092-802-3677
    E-mail: jcryo-qw(at)sc.kyushu-u.ac.jp

当日の講演資料


特別講演 各研究機関からの研究紹介

2011年度総会および特別講演会報告



九州・西日本支部第10回総会を2011年4月22日(金)午後1時50分よ
り九州大学伊都キャンパス、稲盛財団記念館1階稲盛ホールにて開
催した。冒頭、出席者数と委任状の数より総会が成立していること
が報告された。そして議長に川畑秋馬氏を選出した。圓福敬二支部
長の開会の挨拶のあと、続いて議事として、2010年度事業報告、会
計報告、ならびに監査報告がなされ、全会一致でこれらは了承され
た。続いて、役員の交代について説明があったのち、2011年度支部
事業計画、2011年度予算案が諮られ、それぞれ全会一致で承認され
た。事業計画では特に、今年度は、支部設立10周年記念事業として、
この日に行われる特別講演および支部研究会、さらに7月16日から
18日に沖縄県宜野湾市で行われる第3回超電導ワークショップが行わ
れる予定である。

 引き続いて、支部設立10周年記念式典が行われた。まず圓福支
部長より挨拶があった。その後、前支部長の松下照男氏より「支部
10年の歩み」と題して支部活動の総括的な報告があった。次に山藤
馨 低温工学・超電導学会 学会長より挨拶があった。1961年の低温
工学懇話会発足の歴史から話が始まり、二酸化炭素による地球温暖
化という20世紀の課題を21世紀では別なアプローチにより解決する
必要があり、企業と大学だけではなくて、社会を巻き込んで行く必
要がある。そのためには「まず隗より始めよ」、"think globally,
act locally"で支部から始める必要がある。支部の活躍に期待する
という挨拶があった。 続いて、斗内政吉関西支部長より挨拶があっ
た。入江先生、信貴先生の思い出が語られ、役に立つ科学に軸足を
移す必要があることが強調された。最後に、支部同士で、連携と切
磋琢磨をして日本、世界の発展に貢献していきましょうとまとめら
れた。

続いて特別講演が行われた。下記の2件の講演が行われた。
1.「電磁現象の解明から超電導線材設計の時代へ」
    九州大学名誉教授
      山藤 馨 氏  
   2.「実用期に入った高温超電導線の開発と応用製品への展開」
    住友電気工業(株)材料技術研究開発本部
    佐藤 謙一 氏

山藤先生の講演では、1911年4月8日超電導現象の発見、1961年
Nb-Ti発見、1986年銅酸化物超電導体発見、等の世界における超電導
研究の歴史が、1911年九州大学工学部発足、1961年九州大学におけ
る超電導工学の研究開始、1987年入江先生紫綬褒章受章、等の九州
における超伝導研究の歴史に対応していることが紹介された。また、
先生の博士課程の頃にBCS理論が提出され、これが契機になって入江
先生と研究室を立ち上げる頃の話が紹介されて、大変興味深かった。
入江先生は「山藤先生と相談して研究室のテーマを決める」と言わ
れたが、これは教授がテーマを決めるという当時の習慣からすると
画期的な考え方であった。そこで山藤先生は他の大学からのオファー
を断って、入江先生と研究を始めることになった。入江先生の希望
テーマはレーザーだったが、Nb-Tiの発見が決め手となって、山藤先
生の希望通り超電導工学になったとのことであった。そして、九州
大学の入江・山藤研が行った仕事や業績を俯瞰され、最初の頃は、
当時のfirst principleに基づく超電導科学をベースに超電導電磁工
学を絨毯爆撃的に解明していったが、超電導・低温工学がある程度
発達した現在では、ニーズに合わせた技術開発、工学の建設をする
必要があると説かれた。最後に、地球環境の改善、エネルギーの供
給問題の根本的解決が21世紀の課題であり、超電導・低温工学はこ
の解決に有力な手段を提供できる可能性を秘めていることから、低
温工学・超電導学会の責務は重要であると締めくくられた。

佐藤謙一氏の講演では、九州の大学とのこれまでの共同研究内容が
80件以上に及ぶことの紹介から始められた。そしてBi系高温超電導
線の発展の歴史、どのような点に利用する利点があるかということ
が解説された。さらにいろいろなBi系の利用のされ方の紹介があっ
た。ブレットヒーターという金属の加熱装置がリピートオーダーの
出ている初めての製品となっていること、モーター、ケーブルの3つ
の応用例の紹介があった。特にケーブルに関しては、現在のところ
送電ロスが5%あり、500億kWhつまり原発7機分のエネルギーが消えて
いる状況であり、これは400万トンのCO2に相当するので、超電導化
によりこの損失を減らすことができると、大きな効果があることが
説明された。また多数の質問がでて、これに丁寧に答えられていた。
たとえば震災の影響については、再生可能エネルギーを入れて行く
ことや、遠隔地にある再生可能エネルギーをためる技術、運ぶ技術
をこれから企業では開発していくことが重要であるとし、ビジネス
チャンスになるだろうと指摘された。

九州・西日本支部研究会報告
九州・西日本支部研究会を翌日の2011年4月23日(土)より九州大学伊都キャンパス、稲盛財団記念館1階稲盛ホールにて開催した。最初に次の2件の特別講演が行われた。
  1.「Y系超電導線材・機器の開発戦略と今後の展開(仮題)」
    (財)国際超電導産業技術研究センター 超電導工学研究所 所長
      塩原 融 氏    

  2.「低温超電導線材の開発と機器への展開(仮題)」
    ジャパン スーパーコンダクタ テクノロジー(株) 線材工場 工場長
    宮武 孝之 氏

最初にISTEC所長の塩原氏よりコート線材に関する講演があった。こ
れまで基板を配向させるためにISTECオリジナル技術を開発し、
IBAD-MgO + PLD CeO2により短時間で数度のずれしかない基板を得る
ことができるようなったことが紹介された。現在では600m×600Aの
コート線材が実現できている。また現在開発中の新しい人工ピンで
は77.3K, 3Tにおいて70Aの臨界電流を持つコート材が実現できてい
るという最新情報もあった。また日米で開発競争が進んだが、韓国
のここ半年でのIc Lの延びが急であり、注目しているということで
あった。前日の佐藤氏の指摘と同じように送配電ロス5.0%を下げる
ためには超電導化が有効であるために、送電ケーブルや変圧器が有
望であることが示された。そして1から4兆円/年をCO2オフセットで
支払うということになるのであれば、太陽光、風力による発電にメ
リットがあるとし、特に風力は大きくするとメリットがあるために、
ナセルが大きくなり、常電導は大きすぎるので超電導にする必要が
あることが説明された。そのために、モーターや発電機を超電導化
することに期待しているということであった。最後に、これからは
特性のmaximizationからシステムのoptimizationへ転換していくと
語られた。

次にJASTECの線材工場 工場長の宮武氏より主にNMRマグネットの開
発について詳細な講演があった。最初に神戸製鋼の歴史について説
明があった。1989年に線材事業とマグネット事業をたちあげ2002年
に両事業を統合してJASTECが設立された。NMRを一貫して作っており、
累積で1000台を越えた。各種マグネットでは累積400台くらいになっ
ていて、最近は特に医療用が売れていることが紹介された。線材工
場自身は1917年にスタートしており、超電導線材としては、主に
Nb3SnとNb-Tiが製造されている。特にNMR用線材は世界の51%のシェ
アを誇りで世界1位である。NMRは解像度をよくするために、共鳴周
波数を高くするつまり印加磁界を高くしていく開発が進められた。
500MHzから、Nb-Tiに代わりNb3Snとなった。750, 800, 900, 920,
930MHzまでは世界初の製品を開発している。設計の際に特に問題に
なるのがフープ力であり、クエンチ時にフープ力が大きくなるため、
通常の2倍以上かかることもある。線材は平角化が重要であり、奧が
深いことが説明された。ただ形状を変えるだけではJcがさがること
があり、フィラメントの形状を保つ必要がある。つまり磁場の方向
により結晶粒の働きが違うとJcに大きく影響があると説明された。
その後の質問に丁寧に答えられていた。

午後の前半のセッションには、学生によるポスター発表が行われた。
5大学23人の大学院生の研究テーマは、基礎物性評価から薄膜や線材
材料の電磁気特性評価、モーターや変圧器といった電力機器開発に
至る幅広いもので、本支部のスペクトルの広さを感じるものであっ
た。発表に際しては、低温工学・超電導学会に倣って1分間スピーチ
を設けた。この1分間スピーチは、学生自身が研究の概要について理
解し、まとめ、話すという教育的効果だけでなく、普段交流の少な
い学生同士がポスター発表を通じて交流するきっかけとしても有効
だったようで、活発な質疑応答が行われていた。発表プログラムは
以下のとおりである。

1. 永水隼人(九工大)「人工ピンを導入したTFA-MOD法YGdBCO線材の磁束ピンニング特性」
2. 和田純(九工大)「PLD 法 GdBCO 線材の臨界電流密度特性に与える超伝導層厚の膜厚の影響」
3. 久家広嗣(九州大学)「液体ヘリウム浸漬冷却MgB2超電導モータの回転特性」
4. 渡辺和樹(九州大学)「MgB2線材と非超伝導線を併設した液体水素用液面計の提案と検証」
5. 宇都浩史(九州大学)「多層コイルに巻いた酸化物超伝導並列導体の電流分流特性の検討」
6. 川嵜基弘(九州大学)「新低交流損失Bi-2223超電導線の開発(2) −中央絶縁層をもつ多芯線の結合時定数の評価−」
7. 堤智章(九州大学)「REBCO超電導変圧器の過大電流に対する応答特性の検討」
8. 友田慎一朗(九州大学)「500kW REBCO超電導同期モータの設計検討」
9. 林卓矢(九州大学)「REBCO超電導テープ線材の交流損失特性」
10. 森脇大輔(九州大学)「超伝導二本転位並列導体の巻乱れの修正モデルに関する検討」
11. 八尋達郎(九州大学)「5T級超電導コイルの交流損失の検討」
12. 塩原敬(九州大学)「TFA-MOD法により作製されたYBCOコート線材の臨界電流密度分布に与えるガスフローの影響と均一性の向上」
13. 榊原崇志(九州大学)「電流輸送特性のモデリングに基づくREBCO線材の臨界電流密度マップ」
14. 田上貴大(九州大学)「配向基材型イットリウム系高温超伝導線材の損失分布の可視化」
15. 奥村慶太郎(九州大学)「走査型ホール素子磁気顕微鏡を用いた希土類系高温超伝導線材の臨界電流密度分布評価」
16. 加藤祥晃(九州大学)「磁気顕微鏡への適用を目指したアレー型微小ホール素子磁気センサの作製と評価」
17. 作田大夢(鹿児島大学)「ポインチングベクトル法による高温超伝導短尺線材の交流損失測定」
18. 向井実樹成(鹿児島大学)「ポインチングベクトル法によるコイル形状長尺超伝導線材の交流損失測定」
19. 濱田圭司(鹿児島大学)「ピックアップコイルを用いた超伝導変圧器の運転監視装置の開発」
20. 野中勝也(鹿児島大学)「高温超伝導電流トランスを用いた高温超伝導導体の特性評価」
21. 沖田健祐(熊本大学)「誘導法によるバイクリスタルSTO基板上YBCO薄膜のJc磁場角度依存性の非破壊・非接触測定」
22. 土屋啓輔(熊本大学)「衝撃固化法ターゲットを用いたPLD法YBa2Cu3Oy薄膜の輸送特性」
23. 長野 克昭(広島大学)「CeRu2Al10とLaRu2Al10のラマン散乱」

午後後半には、九州・西日本支部の研究機関からの研究紹介が次のようにあった。
熊本大学 (藤吉孝則)
広島大学 (宇田川眞行)
高知工科大学 (前田敏彦)
鹿児島大学 (川畑秋馬)
九州工業大学 (小田部荘司)
九州大学 (圓福敬二)
九州電力(株)総合研究所 (林秀美)

(九州工業大学 小田部荘司、九州大学 井上昌睦)



講演する山藤馨氏


講演する佐藤謙一氏


講演する塩原 融氏


講演する宮武 孝之 氏


会場の様子


挨拶する円福支部長


特別講演会の様子