H21年度 外国人著名研究者による特別講演会

H21年度 外国人著名研究者による特別講演会のご案内



CO2削減のための次世代電力ネットワークとして、超伝導電力ケーブ
ルに関する関心が国内外において高まっています。その実用化の鍵
を握る、優れた臨界電流特性を有する、高温超伝導線材の開発のた
めには、材料学的知見と共に、プロセス技術開発、電磁特性の理解
など融合分野での進展が欠かせません。今回は、欧州における超伝
導材料開発において先導的仕事をされている、バルセロナ中央材料
研究所 所長Obradors教授をお招きして、イットリウム系高温超伝導
薄膜 のナノ組織制御による電流輸送性能の飛躍的向上と、線材への
応用についてお話しいただきます。高温超伝導薄膜に対する人工ピ
ン導入技術と線材応用の最先端について、分かりやすくご紹介いた
だきます。超伝導分野の研究者は勿論のこと、学生の皆さんをはじ
め、幅広い分野の方を対象とした内容となっております。ご参集下
さい。どなたでもご参加できます。

「欧州における高温超伝導線材開発の進展(仮題):
  ― ナノ組織制御による高温超伝導線材の臨界電流特性の向上 ―」

Xavier Obradors教授(バルセロナ中央材料研究所 所長、スペイン)

●日時:2009年11月5日(木) 14:00〜15:30
●場所:九州大学 大学院システム情報科学研究院 大講義室(ウエスト2号館3階313号室)
   〒819-0395福岡市西区元岡744 、 伊都キャンパス
    

共催:応用物理学会九州支部
    九州大学 超伝導システム科学研究センター
後援:組織的な大学院教育改革推進プログラム:5つの力を持つシンセシス型博士人材の育成
    九州大学P&P 巨大ひずみによる新機能材料創出プロジェクト

問い合わせ先: 木須 隆暢
九州大学 大学院システム情報科学研究院
Phone : 092-802-3686, Fax : 092-802-3677
E-mail: kiss(at)sc.kyushu-u.ac.jp




九州・西日本支部だより:外国人著名研究者特別講演会報告



九州・西日本支部では2009年11月5日に九州大学 伊都キャンパス システム情報
科学研究院大講義室にて外国人著名研究者による特別講演会を開催しました。今年度は、欧州
における超伝導材料開発において先導的仕事をされている、バルセロナ中央材料研究所 所
長のObradors教授をお招きし、「Materials science and vortex physics challenges in
coated conductors ― ナノ組織制御による高温超伝導線材の臨界電流特性の向上 ―」の
題目で講演していただきました。参加者は学生を中心に40名。世話役の九州大学木須先生
から紹介の後、講演が始まりました。

講演では、まず、スペインの有名なサグラダファミリア教会が、着工から100年を経て
未だに人々の興味を惹き付け、着々と建築が進められていること、そして、教会全体は未
完成といえども、日々新たな部分の公開が行われていることを例に、Onnes教授によって
ほぼ同時期に発見された超伝導についても、間もなく100年を迎える歴史はまだ十分では
なく、ボルテックス物理や、電磁現象の理解など要素的な部分の理解の進展と共に、これ
からまさに成熟(完成)の時を迎えるであろうことを述べられました。その後、イットリウム
系高温超伝導線材の作製プロセスから臨界電流特性に至る広い領域について塗布熱分解法
を中心に紹介されました。特に作製プロセスに関しては、基板の表面粗さから酸素分圧、
熱処理温度等の各種条件の依存性を詳細かつ系統的な実験データを提示しながら説明して
いただきました。さらに、人工ピンの導入効果についても、ナノ構造解析と臨界電流特性
から、micro-strainとJcに相関があることを丁寧に説明して下さいました。

講演後の質疑応答では、研究内容に関する質疑が活発に行われ議論は尽きませんでした
が、予定時間を1時間程超過したところで止む無く閉会となりました。専門分野が多岐に
わたっていた参加者の皆さんが、それぞれの視点から興味を持っていただけたのが印象的
な講演会でした。
                      (九州大学 井上昌睦)