2006年度 第2回研究会(第3回材料研究会との合同研究会)



現在開発が進められているY系及びMgB2超電導線材を実用線材と
して世に送り出すことを念頭に置いた時、高Jc化技術はどのような
ものであるべきか。実用的に使用されている金属系超電導線材では
高Jc化のためにどのような技術が開発されたか、また理論的側面か
らみて高Jcには何が必須要件なのか、そして現在のY系及びMgB2超
電導線材ではどのような技術が研究開発中であるのか、講師の先生
方に紹介していただきます。

普段の学会等では超電導材料毎にセッションが分かれる場合が多い
ため、異なる超電導材料間で結晶粒界弱接合性やピンニングセンター
に関して相互に比較する機会は多くないと思います。今回は、これ
までの成果と今後の可能性、実用化された超電導材料と開発中の超
電導材料との比較を通して、議論していただく機会として企画しま
した。

低温工学・超電導学会前日の開催ですので、多忙なエンジニア・研
究者のみなさんの効率良い情報収集の場となり、Y系及びMgB2超電
導線材の実用化を加速する新しい技術が生み出される機会となるこ
とを期待しております。


テーマ:先進超電導材料における高Jc化技術

日  時:2006年11月19日(日) 13:30〜17:30
場  所:熊本大学工学部黒髪総合研究棟 2階204(多目的会議室)
〒860-8555 熊本市黒髪2−39−1

交通案内: 熊本大学HPをご覧ください。
飛行機で熊本空港までおいでの方はこちらから。
参加費(資料代):2,000円(どなたでも自由に参加できます)

プログラム
開会の挨拶  住吉文夫(九州・西日本支部長)             13:30〜13:35
1. 磁束ピンニングと高Jc化           松下照男(九州工大)  13:35〜14:20
2. 金属系超電導線材における高Jc化技術     松本要(京都大)   14:20〜15:05
3. RE系線材における高Jc化技術         山田穣(超電導工研) 15:05〜15:50
 休憩           15:50〜16:10
4. RE系薄膜への人工ピンニングセンターの導入  吉田隆(名古屋大)  16:10〜16:55
5. MgB2における高Jc化技術           北口仁(NIMS)    16:55〜17:40
閉会

オーガナイザー:土井俊哉(鹿児島大)、原田直幸(山口大)、岩熊成卓(九州大) 
問い合わせ先:鹿児島大学工学部電気電子工学科 土井俊哉 
TEL:099-285-8389 FAX:099-256-1356 E-mail:doi@eee.kagoshima-u.ac.jp

研究会のレポート


 今回のテーマは「先進超電導材料における高Jc化技術」であった。
現在開発が進められているY系及びMgB2超電導線材を実用線材とし
て世に送り出すことを念頭に置いた時、高Jc化技術はどのようなも
のであるべきか。実用的に使用されている金属系超電導線材では高
Jc化のためにどのような技術が開発されたか、また理論的側面から
みて高Jcには何が必須要件なのかを改めて確認し、それらの知見を
踏まえた上で、最近のY系及びMgB2超電導線材ではどのような技術
が研究開発中であるのか、どのような方向に進むべきであるのかを
考える機会として設定された。

 まず、九州・西日本支部の住吉支部長の挨拶で始まり、「磁束ピ 
ンニングと高Jc化」と題して九州工業大学の松下照男氏が講演を行っ
た。Ginzburg-Landau理論の自由エネルギーから、常伝導析出物や
弱超伝導相、結晶粒界などのピン止め候補点と量子化磁束線の相互
作用、効果的なピン止め点とはどのような性質を備えているべきか
等、ピンニングに関する基礎的理論の解説がなされた。その後、金
属系超伝導体、MgB2、Y系線材、Y系バルクなどのピン止め点、ピン
ニング機構について研究状況の説明がなされ、最後に今後の高Jc化
に向けた技術的方向性が提案された。

 次に、京都大学大学院の松本要氏が「金属系超電導線材における
高Jc化技術」の演題で、Nb-Ti合金やNb3Sn等の実用超電導線材にお
いて高Jc化のためにどのような技術開発が行われてきたのか、リボ
ン状α-TiやNbなどの人工ピン導入の話などを中心にレビューした。
これらの線材開発の歴史には長年の基礎的・技術的要素が蓄積され
ており、高温超電導線材やMgB2線材の開発においても、温故知新、
Jc向上のヒントとなる知見が多数含まれていたように思われた。

 続いて、超電導工学研究所名古屋高温超電導線材開発センターの
山田穣氏が「RE系線材における高Jc化技術」の演題で、国内外のRE
系線材の開発状況、高Jc化、高Ic化、長尺化技術について講演を行っ
た。名古屋大学大学院の吉田隆氏は、「RE系薄膜への人工ピンニン
グセンターの導入」の演題で、RE123膜の結晶成長に関して詳細な
解説を行った後、RE123膜への人工ピン導入に関する最新の研究状
況を報告した。

 最後の講演は物質・材料研究機構の北口仁氏が「MgB2における高
Jc化技術」のタイトルで講演を行った。パウダー・イン・チューブ
法で作製したMgB2線材での高Jc化、Jc−B特性の向上に関する研究
の現状、及び薄膜を用いたピンニングセンターの同定、人工ピン導
入の試みなどについての解説が行われた。

 最後に材料研究会長の松本氏が閉会の挨拶を行って散会となった。
休日午後の開催であったにもかかわらず、参加者は42名と盛況であっ
た。普段の学会等では超電導材料毎にセッションが分かれる場合が
多いため、異なる超電導材料間で結晶粒界弱接合性やピンニングセ
ンターに関して相互に比較、議論する機会は多くないと思われ、大
変活発なディスカッションが行われた。
(鹿児島大 土井俊哉)



Last modified: Wed Dec 13 17:25:46 JST 2006