第3回 材料研究会/九州・西日本支部 合同研究会


− HTSの永久電流とその応用 −


開催通知

第3回 材料研究会/九州・西日本支部 合同研究会のご案内
− HTSの永久電流とその応用 −

酸化物高温超電導体(HTS)ではバルク材における永久電流を利用し
て、さまざまな応用に向けての研究が進められています。さらに最近
になり、銀シースBi-2223線材で製作したコイルを永久電流モードで
使用する応用例が報告されています。今回の研究会ではHTSの永久電
流を用いて磁界の発生、磁気浮上、それらの最新の応用例をまとめて
講演していただき、その情報を利用してもらうように企画しました。

はじめに理論的な側面からHTSの磁束ピンニングと永久電流の関係、
バルク材の特性などを講演していただいた後に、最新の応用例として
バルク応用2件とBi-2223線材コイルの永久電流モードの利用2件の講
演を予定しています。また講演会の後、北九州市にある代表的な企業
である三菱化学の見学会および懇親会を予定しています。奮ってご参
加くださるようにお願いいたします。

期 日: 平成16年10月22日(金)11:00〜17:00
場 所: 北九州国際会議場 〒802-0001北九州市小倉北区浅野3丁目9-30
交通案内:JR小倉駅北口から徒歩7分。駐車場はアサノパーキング(600円/日)
          を利用できます。
http://www.kitakyu-cb.jp/
参加費(資料代): 2,000円(どなたでも自由に参加できます)
懇親会: 北九州国際会議場内レストラン ラ・プラージュ 会費3,500円

プログラム:
11:00〜11:10 開会の挨拶	永田明彦(材料研究会委員長)

講演会
11:10〜11:40「磁束ピンニングと永久電流」松下照男 (九工大)
11:40〜12:40 (昼食)
12:40〜13:10「バルク搬送システム」	津田理 (山口大)
13:10〜13:40「電力貯蔵システム」	廣瀬誠 (四国総研)
13:40〜13:50 (休憩)	
13:50〜14:20「Bi-2223浮上コイル」	五十嵐基仁 (JR東海)
14:20〜14:50「Mini-RT」			小川雄一 (東京大)

見学会
15:30〜17:00 三菱化学

懇親会
18:00〜20:00 懇親会

問い合わせ先:九州工業大学情報工学部電子情報工学科 松下照男、小田部荘司
Tel.&FAX:0948-29-7683  E-mail:otabe@cse.kyutech.ac.jp

研究会の様子


永田材料研究会 委員長による開催挨拶


会場の様子


JR東海の五十嵐氏による講演


三菱化学に工場見学。岩塩の山とパイプだらけのプラント


三菱化学の研究所の説明

第3回 材料研究会/九州・西日本支部 合同研究会が平成16年10月 22日(金)11:00〜17:00に北九州市北九州国際会議場にて開催され、 大学関係研究者と大学院生を中心に46名の参加があった。今回のテー マは「HTSの永久電流とその応用」として、主にY-123バルク材の永久 電流を利用した磁気浮上応用と、最近報告されるようになった銀シー スBi-2223線材で製作したコイルを永久電流モードで使用する応用例 について講演をいただいた。

最初に永田明彦材料研究会委員長から挨拶をいただいたのち、最初の 講演として松下照男氏(九工大)が「磁束ピンニングと永久電流」と題 して、理論的な側面からHTSの永久電流についてまとめた。厳密には 永久電流は抵抗0のマイスナー状態でしか実現できないが、HTSではそ れは10mT以下でしかおこらず、磁界中ではピンニング電流に頼らざる を得ない。しかしピンニング電流は臨界電流密度以下では永久かとい うと、熱揺動により磁束線が動いてしまうので、いわゆる磁束クリー プが問題となり、時間とともに減衰してしまう。これを防ぐ方法とし て、強いピンの導入、異方性の小さい3次元的超電導体を用いる、十 分大きなサイズの超電導体を用いることが強調された。

次に津田理氏(山口大)が「バルク搬送システム」について広範囲な内 容をまとめて講演された。講演の中で紹介されたのは、中国 Southwest Jiaotong大学の人間が乗れる世界初のバルク体浮上搬送装 置、産総研の物資輸送システム、早稲田大学の方向転換可能な浮上搬 送システム、および鉛直方向連続浮上システム、鉄道総研の浮上搬送 システムなどであった。これらは磁場発生源が永久磁石と電磁石の場 合に分けて説明された。さらに今後の展望として、具体的な適用例を あげ、その対抗技術についても述べられた。

続いて、廣瀬誠氏(四国総研)が「電力貯蔵システム」と題して、今年 度四国総研で試験をしている、10kWh級超電導フライホイール電力貯 蔵システムの最新の結果を講演された。浮上力を得るために軸に超電 導体を6層縦に並べ、その外側に永久磁石を配置するラジアル型超電 導軸受で433kgの回転体全体を支持する構造になっている。超電導軸 受の隙間0.8mmに対して、軸の振動は840rpmを通過するときに最大 0.2mmであり、通常はもっと振動は小さい。また上下変動は50μm程度 である。目標回転数は15,860rpmであるが、現在8,000rpmまでの回転 に成功し、超電導フライホイールとしては世界最高の2.5kWhのエネル ギー貯蔵にすでに成功している。講演ではさらに大容量化を目指して ハルバッハ型永久磁石の適用について有限要素法を用いた検討を報告 された。

後半はBi-2223線材の永久電流を利用する応用例の報告であり、五十 嵐基仁氏(JR東海)が「超電導磁気浮上式鉄道用Bi2223コイル」の講演 をされた。現在山梨リニア実験線で使われている、超電導磁気浮上式 鉄道(JR-MAGLEV)のNb-Ti線材の超電導磁石について、そのまま置き換 え可能なBi2223コイルを1999年から開発を続けている。1/2スケール レーストラック型HTSコイル試作、2段GMパルスチューブ冷凍機開発、 YBCO薄膜の永久電流スイッチ開発、着脱パワーリード開発などがあっ た。これらの要素開発を統合してフルスケールのコイルマグネットを 試作し、目標の10%/日の電流減衰率を大幅に下回る0.44%/日の性能を 得ることができた。特に長い線材を使うことから、通常の1μV/cmで の線材性能よりもずっと低い1nV/cmの領域での線材劣化が無いかどう かをきちんとチェックし、巻線をすることが重要であることが議論さ れた。

最後に、小川雄一氏(東京大)から「内部導体装置Mini-RT」と題した 講演をいただいた。Mini-RTはプラズマ実験を行うために、高温超電 導コイルを永久電流モードで浮上させるプラズマ閉じ込め装置である。 真空容器の中にBi2223線材によるコイル、永久電流スイッチ、冷却用 の着脱式トランスファーチューブなどを組み込んだもので、総重量は 16.8kgである。これを10時間ほどで室温から20Kに冷却し、120Aのコ イル電流を通電してから、機械支持で所定の位置まで持ち上げ、その のち上部にある引き上げコイルの電流をレーザーによる上下位置検知 による制御を行いながら流し、高温超電導コイルを浮上させる。精度 は20μmで、1時間の浮上に成功した。講演では動画で、浮上高さ制御 を自在にできる様子が示された。この講演の際も永久電流を利用する 際の超低電界における特性が重要であることが強調された。バルク超 電導体による応用は従来の金属超電導体では成し得なかったものであ り、Bi-2223コイルによる永久電流利用はつい最近になって成果を得 たものである。今後の応用に期待した熱心な討論が行われた。

講演会ののち、北九州市の代表的な企業である三菱化学の工場見学を おこなった。なお、講演内容は当日の配布の資料にあります。必要な 方は協会事務局までお問い合わせください。最後になりましたが、ご 協力をいただいた関係各位に厚くお礼申し上げます。


Last modified: Mon Jan 24 12:11:42 JST 2005