2013年度 若手セミナー・支部研究成果発表会のご案内


「超電導材料製造技術の材料科学 −材料創製から大量生産まで−」



本セミナーは、大学や企業の若手研究者や技術者を対象として、超
電導関連技術の基礎を理解してもらうことを目的として毎年開催し
ているものです。

今回は、九州・西日本支部において、超電導材料の基礎からその応
用技術まで幅広く研究開発が行われていることを踏まえて、特に応
用において重要となる線材・薄膜作製における基礎的な材料科学
(作製法、組織評価、大量生産技術)に焦点を当てたセミナーを開
催することといたしました。学会等では線材製造や薄膜形成、およ
びその性能に関する多くの報告がありますが、材料科学の基礎につ
いてまとめて聞く機会はあまりないかもしれません。今回のセミナー
では、超電導材料作製の基礎から大量生産技術まで、材料の非専門
家の方にもわかるように易しく解説していきます。薄膜の成長・評
価の講義も含んでいるので、線材に限らず、電子デバイスを専門と
されている方にも有益かと思います。また、併せて、支部研究成果
発表会として、参加学生からは最近の研究成果を発表していただき
ます。

この機会に支部会員にかかわらず、多数の若手を含む研究者・技術
者が参加され、この分野での知識や交流を深められることを期待し
ております。

主  催:    低温工学協会 九州・西日本支部
日  時:    2013年9月5日(木) 13:00 〜 9月6日(金)18:00
場  所:    九州工業大学戸畑キャンパス  百周年中村記念館 2階 多目的ホール
    〒804-8550 福岡県北九州市戸畑区仙水町1-1  (JR九州工大前から徒歩10分)
日  程:
2013年9月5日(木) 
   13:00〜13:10 開会の挨拶  圓福敬二 支部長 (九州大学)
   13:10〜14:40 講義 「超電導材料創製の基礎 - 結晶成長・薄膜成長」
             松本 要 (九州工業大学)
   14:50〜15:40 講義 「超電導材料の構造解析�� - X線回折を中心に」
         堀出朋哉 (九州工業大学)
   15:50〜16:50 講義 「超電導材料の構造解析�� - 電子顕微鏡を中心に」
             一瀬 中 (電力中央研究所)
   17:00〜17:50 参加者(グループ)による自己紹介
   18:00〜    懇親会 (焼鳥 本丸 Tel:093-871-5768、会場から徒歩5分)

2013年9月6日(金)
    9:00〜10:30 講義 「超電導線材・大量生産技術 - コーテッドコンダクターを中心に」
             宮田成紀 (超電導工学研究所)
   10:40〜12:10 講義 「超電導線材化技術の現状と課題」
             淡路 智 (東北大学) (東北・北海道支部との交流により)
        - 昼食 -
   13:00〜18:00 支部研究成果発表会(発表公募)


定  員: 40名

参 加 費: 正会員 7,000円、非会員 10,000円
        (テキスト代、懇親会費等を含みますが、宿泊費は含みません。
          同時に学会入会申込みの方も正会員とみなします。
        開催当日までに支部事務局の銀行口座宛お振り込み下さい。)

申込締切: 2013年8月26日(月) 但し、定員に達し次第締め切ります。

申込方法: 参加申込書 にご記入の上、下記事務局宛にお送り下さい 。
     低温工学・超電導学会 九州・西日本支部 事務局
          (九州大学 木須研究室内)
         Tel:092-802-3678 Fax:092-802-3677
         E-mail:jcryo_qw(at)sc.kyushu-u.ac.jp

参加費振込先: 福岡銀行 黒門(くろもん)支店(店番215)口座番号: 普通 1612494    
口座名義: 低温工学・超電導学会九州西日本支部事務局 会計幹事 木須隆暢(きすたかのぶ)

問合せ先: 2013年度 九州・西日本支部 若手セミナー 世話人
           九州工業大学 大学院 工学研究院 物質工学研究系  松本 要
           Tel:093-884-3366  E-mail: matsu(at)post.matsc.kyutech.ac.jp



当日の報告

2013年9月5日から 9月6日に九州工業大学戸畑キャンパス百周年中村
記念館2階の多目的ホールにて九州・西日本支部若手セミナー・支部
研究成果発表会が行われた。この百周年中村記念館は2013年3月に設
立したばかりで、参加者のほとんどは初めて来られたと思います。

今回は、九州・西日本支部において、超電導材料そのものから応用
技術まで幅広く研究開発が行われていることを踏まえ、特に、超電
導線材や超電導薄膜の製造の基礎となる材料科学(作製法、組織評
価、大量生産技術)に焦点を当てたセミナーを開催することといた
しました。学会等では線材製造や薄膜作製、およびその性能に関す
る多くの報告がありますが、関連する材料科学の基礎についてまと
めて聞く機会はあまりないです。今回のセミナーでは、材料作製の
基礎から大量生産技術まで、専門以外の方にもわかるように易しく
解説していただくこととしました。

初日には講義が3件と、研究グループの自己紹介がありました。最初
に 「超電導材料創製の基礎 - 結晶成長・薄膜成長」と題して九州
工業大学の松本要先生から講義がありました。講義は1時間半でスラ
イド70枚であったので、大学の講義に換算すれば2から3コマに相当
するであろう内容が含まれていました。熱力学を理論のベースとし
てどのように結晶が成長するのかということについて、基礎的なと
ころから説き起こして講義が行われました。

次に「超電導材料の構造解析�� - X線回折を中心に」と題して九州
工業大学の堀出朋哉先生から講義が50分ありました。ここではX線回
折装置を利用してどのような事がわかるのか、読み取ることができ
るのかということが、やはり基礎的なところから説明されました。
特に最近のゴニオメーターは4軸にもわたって回転させることができ
るので、試料の結晶状態についてかなりの情報を得ることができる
ようになっており、興味深く聞くことができました。

初日の最後は「超電導材料の構造解析�� - 電子顕微鏡を中心に」と
題して電力中央研究所の一瀬中先生より1時間の講義が行われました。
ここでは透過型顕微鏡(TEM)について基礎的なところから話が始ま
り、具体的にどのような写真が得られるのかということが説明され
ました。質問では、材料を作って観察を依頼するときには、どのよ
うな目的で作られてどのようなことが期待されるのかということを、
観察する研究者としっかり議論をしないと、ただ観察するだけでは
きちんとした仕事にならないということが強調されていました。

初日の最後に各研究グループからの自己紹介がありました。南から
順に始めました。鹿児島大学川越グループ、熊本大学藤吉・末吉グ
ループ、九州工業大学小田部・木内グループ、九州工業大学松本グ
ループ、山口大学諸橋・原田グループ、島根大学山田・舩木グルー
プが紹介をしました。その後、懇親会を行いました。

二日目には午前中に講義が2件あり、午後からは主に学生や若手の研
究者からの19件の研究成果発表が行われました。

最初の講義は「超電導線材・大量生産技術 - コーテッドコンダクター
を中心に」と題して超電導工学研究所の宮田成紀先生から1時間半行
われました。具体的にコーテッドコンダクターについてどのように
材料が作製されるのかということが、前半は中間層の配向の仕方、
後半は超電導層の積層について丁寧に説明されました。特に中間層
においては、いくつもの層が重ねられていますが、それらにはきち
んとした理由があって準備されていて、その成果で全体の超電導特
性が向上しているということがよく分かりました。

次の講義は「超電導線材化技術の現状と課題」と題して東北大学の
淡路智先生が東北・北海道支部との交流により行われました。淡路
先生はこの週の月曜日と火曜日は東北・北海道支部で若手セミナー
があり、木曜日と金曜日は九州・西日本支部の若手セミナーに参加
されたということでした。Nb3Sn線材における開発の歴史、どうして
極細多芯線構造になるのか、そして最新の技術動向に至るまで丁寧
に講義がありました。現在でも金属超電導体が最先端の技術として
技術開発されているということが分かりました。

若手セミナーでは普段の学会では聞くことができない、ごく基礎的
なところが丁寧に講義され、それが少し専門外の研究者には非常に
新鮮に聞くことができます。また内容についてはアンケートで選べ
られているので、来年度もまた興味深いテーマが選ばれるものと期
待しています。参加者は講演者を含めて52名となり、大変盛況でし
た。             (九州工業大学 小田部荘司)



講義を行う松本要先生



会場の様子

低温工学・超電導学会 九州・西日本支部 2013年度 若手セミナー
支部研究成果発表会 概要

1.猿渡 将貴 (九州大学 システム情報科学研究院電気システム工学部門 岩熊研究室)
「200 kW級Y系超電導同期電動機の設計検討」
Y系超電導線材を用いた空芯の高性能超電導同期電動機について小型
化を目的としたうえで、電動機の損失を明らかにし、超電導電動機
の設計・開発の方向性を検討した。数値解析の結果、解析した電動
機の体積は既存の常電導電動機のおよそ55 %程度となった。また、
空芯構造にすることにより重量は体積比以上の割合で軽量化が可能
であることがわかった。

2.大坪 祐平 (九州大学 システム情報科学研究院電気システム工学部門 岩熊研究室)
「20MVA級REBCO超電導変圧器の短絡過大電流応答特性」
磁束フロー状態を考慮した数理解析プログラムを開発し、66 kV -
20 MVA級源流機能性付超電導変圧器の突発短絡時の応答特性につい
て検討した。その結果、CuNi線を30 ?m、Ag層を15 ?mとしたとき、
0.2秒後の短絡電流を定格電流の3倍以下に、巻線温度も180 K以下に
抑制できることを明らかにした。

3.益田 佳一郎 (九州大学 システム情報科学研究院電気システム工学部門 岩熊研究室)
「REBCO超電導線材の交流損失への温度スケーリング則の評価」
線材の積層枚数が変化しても、温度スケーリング則が適用可能かそ
の妥当性について評価した。その結果、積層枚数を変えた際にも温
度スケーリング則が適用可能であることがわかった。

4.帯田 啓太 (鹿児島大学大学院理工学研究科電気電子工学専攻 川越研究室)
「ポインチングベクトル法による高温超電導線材の交流損失測定
 -コイル形状長尺線材への適用-」
交流磁化損失の精度良く測定することを目的として、ポインチング
ベクトル法をコイル形状長尺超電導線材へ適用し、単位時間・単位
体積当りの交流損失を測定した。交流損失の予測値と測定値は良く
一致し、同手法による交流損失測定が可能であることが確認された。

5.吉富 邦和 (九州工業大学大学院情報工学府情報システム専攻 小田部・木内研究室)
「超電導直流送電ケーブルにおけるリップル電流による交流損失」
交直変換に6相、12相、24相の整流電流を用いた際の交流損失につい
て評価した。その結果、交直変換に整流電流を用いた際の交流損失
は履歴損失のみで考えてよいことがわかった。また、12相整流によ
り十分交流損失の小さい超電導直流送電が可能であるとわかった。

6.江藤 航介 (九州工業大学大学院情報工学府情報システム専攻 小田部・木内研究室)
「リップル電流を印加した場合の超電導体に生じる交流損失のFEMによる評価」
ストリップ形状の超電導体モデルについて、リップル電流を印加し
た際の交流損失をFEMによるシミュレーションから求めた。シミュレー
ションモデルから得られた解析値と理論値は一致しなかった。詳細
は不明である。

7.細谷 築 (九州大学システム情報科学研究院電気システム工学部門 木須研究室)
「磁気顕微法によるFe(Se,Te)薄膜の局所臨界電流密度分布の評価」
走査型ホール素子顕微鏡(SHPM)を用いて、単結晶基板上に製膜した
Fe(Se0.5 Te0.5)薄膜の局所Jc分布を評価した結果、局所欠陥や不均
一なJc分布が見られることを明らかとした。今後、材料特性の正確
な評価や、特定制限因子の解明に応用できると期待される。

8.金 グラシア (九州大学システム情報科学研究院電気システム工学部門 木須研究室)
「Investigation of local transport properties in HTS by optical microscopic techniques」
Low-temperature laser scanning microscopy (LTLSM)を用いてTcに
近い高温状態における超電導体のバイアス電流を観察し、顕微ラマ
ン分光法による解析結果と併せることで、a軸配向の特に脆弱な部分
を明らかにすることができた。この結果から、超電導体の高Tc化へ
の応用が示唆された。

9.荒木 薫 (熊本大学大学院自然科学研究科情報電気電子工学専攻藤吉・末吉研究室)
「GdBCOコート線材の輸送特性に対する曲げ歪効果の第三高調波電圧誘導法による測定」
第三高調波電圧誘導法を用いて、GdBCOコート線材に曲げ歪を与え、
直線状に戻し測定することで、結晶粒界等の欠陥の検出を試みた。
曲げ直径20mm以下で欠陥が確認でき、第三高調波電圧誘導法による
欠陥等の検出ができる可能性があることがわかった。

10.水上 総司 (九州工業大学大学院情報工学府情報システム専攻 小田部・木内研究室)
「PLD法によるGdBCOコート線材の磁化緩和特性」
Niクラッド基板PLD法GdBCOコート線材について、20 Kにおける
U0*-B特性に超電導層厚の及ぼす影響を評価した。解析結果より、
20 Kでの磁化緩和特性に顕著な影響を与えるのは膜厚ではなく、超
電導層の質の違いによるピン力分布幅の差であるとわかった。

11.上瀧 哲也 (熊本大学大学院自然科学研究科情報電気電子工学専攻藤吉・末吉研究室)
「照射柱状欠陥を導入したBaZrO3/YBa2Cu3Oy擬似多層膜の磁束ピンニング特性」
三次元ピンの粒径・空間分布を制御したBaZrO3/YBa2Cu3Oy擬似多層
膜に重イオン照射による柱状欠陥を導入した状態でのJcの磁場角度
依存性を調査した。結果より、高磁場になるほど有効であり、三次
元ピンの粒径が大きいほど強く作用することがわかった。12.古木
 裕一 (熊本大学大学院自然科学研究科情報電気電子工学専攻藤吉・
末吉研究室) 「広角な交差柱状欠陥を導入したYBCO薄膜における磁
束ピンニング特性」YBCO薄膜に対して1次元ピンをc軸に対してθi=
0°、±30°、±60°で交差状に導入し、導入角度の違いが磁束ピン
ニング特性へ及ぼす影響を調べた。θi=±30°の試料はθ=0°を
中心にスプレイ効果によるJcのピークが見られたが、θi = ±
60°の試料は同様の効果を確認できず、柱状欠陥と試料の固有ピン
ニングが、それぞれの磁場角度で単独で作用していることがわかっ
た。

13.田中 健太 (九州大学システム情報科学研究院電気システム工学部門木須研究室)
「BaHfO3人工ピンを導入した長尺GdBa2Cu3O7-δ高温超電導線材の磁場中臨界電流特性」
短尺GdBCO線材と長尺GdBCO線材の磁場中Jc特性を比較し、短尺線材
の特性に対する再現性を調査した。さらに、超尺線材の長手方向の
空間的なJcの均一性についても調査した。その結果、長尺線材と短
尺線材は同様の特性を示し、また、長尺線材への均一なBHO導入に成
功したことが確認された。

14.大橋 愛一郎 (九州工業大学大学院情報工学府情報システム専攻小田部・木内研究室)
「REBCO コート線材の縦磁界下における臨界電流に人工ピンが与える影響」
縦磁界下においてREBCOコート線材に人工ピンを導入した際の特性を
測定し、縦磁界に働く有効なピンについて調査した。重イオン照射
による欠陥は縦磁界下で有効なピンとして働くことがわかった。

15.秀島 匡彦(九州工業大学大学院情報工学府情報システム専攻小田部・木内研究室)
「配向Niクラッド基板PLD法Gd系超電導線材の臨界電流密度特性」
配向Niクラッド基板GdBCO超電導線材の成膜速度と超電導膜厚がJc、
Ic、に与える影響を調べた。成膜速度が遅い方が厚膜化によるJc劣
化が少なく、Icの上昇を見込めるが、厚膜化しすぎると面内配向が
悪くなり、Jcの劣化が大きく、結果的にIcが減少したと考えられる。

16.原 和輝 (九州工業大学大学院工学府物質工学専攻松本研究室)
「PLD法によりIBAD-MgO金属基板上に作製したハイブリッドAPC導入YBa2Cu3O7-x
 薄膜の超電導特性」
BSOナノロッドとY2O3ナノドットをPLD法により導入し、Jc角度依存
性の異方性低減を目的とした、ハイブリッドAPCドープYBCO薄膜を作
製した。Jc角度依存性を評価した結果、Y2O3ナノドット添加量の多
い試料ほど異方性の低減が確認された。

17.梶原 太智 (九州工業大学大学院工学府物質工学専攻松本研究室)
「YBa2Cu3O7-x-BaSnO3/PrBa2Cu3O7-x多層膜の作製とその超電導特性」
1次元APCとしてBSO、二次元APCとしてPrBa2Cu3O7-x(PrBCO)を用い
た多層膜を作製し、ピン止め機構とAPCの関連性を評価した。PrBCO
層が増加することによりc軸方向の超電導特性が失われ、BSOナノロッ
ドが機能しなくなっている可能性が示唆された。

18. 田口 健太 (九州工業大学大学院工学府物質工学専攻松本研究室)
「BaSnO3ナノロッドを導入したYBa2Cu3O7-x薄膜のひずみ評価」
YBCO+BSO薄膜に存在するひずみがどのような要素により変化するか
について評価した。その結果から、BSOのひずみはBSO濃度により制
御できることがわかった。

19. 青柳 翔馬 (九州工業大学大学院工学府物質工学専攻松本研究室)
「MOD法によるRE(RE:Y,Yb)Ba2Cu4O8薄膜の作製」
RE123系よりも高い特性を有するRE124系であるYb124及びYbCa124の
薄膜作製法の確立のために評価した。Yb124とYbCa124では表面状態
に違いは見られなかった。また製法による比較では、MOD法の試料は
PLD法の試料よりも表面状態が良好であることがわかった。

                  (九州工業大学 水上総司)